2008年03月09日

アラステアの『サロメ』

黄金に輝くビルマ風の一角獣のまわりで、金糸と瑠璃の綾衣を身に纏ったアラステアがゴチックダンスを踊っている。傍らにはクッションを食むように置かれた青銅の鹿。そして、生身の少女から型をとった蝋人形。炉辺からは炎のような熱気が流れ込んでくる…。
−ガブリエル・ダヌンツィオ

Alastair's_Salome

先月半ばに贔屓の古書店より購入し、蝸牛の歩みの如く頁を進めてきた仏対訳『サロメ』(大正13年10月発行 白水社刊)をようやく読了した。
話の筋は解りきっているのだし、対訳なのだから日本語で読めば良いのだが、折角なので字引を片手にちまちまと読んでいたら、時間が掛かってしまった。まァ、そんなに難しいものでもないのだが。

さて、この対訳『サロメ』は一寸珍しいことに、アラステアの口絵が入っており、これが私を嬉しくさせた。

自称、さるバヴァリア皇子の御落胤というこの画家は、本名をハンス・ヘニング・フォクトといい爵位を入手してフォクト男爵とも称したようだ。
ビアズリーと比較されることも多いようだが、時代としてはビアズリーよりも少し後であり、画風はハリー・クラークのそれに一寸似た趣もあるが、その描写はクラークよりずっと病的である。

嘗てチャールズ・リケッツやビアズリーを世に送り出したジョン・レインによってその才を見出され、ダヌンツィオやサラ・ベルナールをはじめとする時代の寵児と交流を持ち、屡屡援助を受けながら、個展や時には匿名で私家版の挿画を描いた。
しかし、デカダン画家としては一番後輩のアラステアの画は、当時既に流行遅れであった。不遇の画家とも云えるだろう。

日夏耿之介訳の奢覇都館版よりも遡ること半世紀も前に、アラステアを日本に紹介した『サロメ』としてこの白水社版を評価したい。


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posted by Usher at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | 更新情報をチェックする
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