2008年03月02日

『玉虫厨子』と『玉虫物語』

玉虫の厨子は、厨子というよりも宮殿のミニアチュールのようである。厨子といえば、一般には仏像や経巻をしまっておくための箱を意味するだろうが、これはむしろ須弥座と台座から成る二重の基壇の上に建てられた、小さな一つの宮殿そのものなのだ。
−澁澤龍彦『箱の中の虫について』

ドラコニア綺譚集 新編ビブリオテカ澁澤龍彦

昨日、法隆寺に奉納された玉虫厨子(たまむしのずし)の複製のニュースを聞いて、澁澤龍彦のエッセイに彼の級友が「玉虫の厨子を復原しようと躍起になっていた」…などという内容のものがあったのをふと思い出した。

澁澤氏はこのエッセイの中で玉虫と箱の関係を一寸ノスタルジックな話を交えて語っているが、マッチ箱に入っていたきらきら輝く玉虫の両羽は、澁澤少年を非常に魅了したようだ。 玉虫への愛着は構想半ばにしてついに書かれることのなかった小説『玉虫物語』へと、いずれは引き継がれたのだろうか。
氏の遺された創作ノートに見ることの出来るメモは、「天草四郎」、「曽丹のこと」、「藤原千方(ちかた)」、そして「長い長い洞窟を通り抜ける話。その途中でありとあらゆる奇事出来。」などとある。

澁澤氏が泉下の人となった今、それを読むことを出来ないのは、返す返すも残念だ。


■「玉虫厨子」複製、法隆寺に奉納 YOMIURI ONLINE
■『ドラコニア綺譚集』 著:澁澤龍彦 河出文庫
posted by Usher at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学 | 更新情報をチェックする
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