2011年05月10日

『オーヴェルニュの歌』

CHANTS_D'AUVERGNE

クラシックファンにとっては割とマニアックな曲の部類に入るのだろうか。
目を閉じれば瞼の裏にのどかな風景が広がるような牧歌的な音楽で、私は結構好きなのだが。

所有している『オーヴェルニュの歌』はキリ・テ・カナワの歌うポリドール盤だが(POCL-3844/5)、ネタニア・ダブラツが歌うコロムビア盤も評判が良いようだ。

映画『タイム・アフター・タイム』で切り裂きジャックがかかる犯行に及ぶ時、開いた懐中時計から流れるオルゴールは第1集の「3つのブーレ〜泉の水」だったが、この曲の歌詞になぞらえたものかもしれない。
L'aïo dè Rotso

L'aïo dè rotso té foro mourir, filhoto!
l'aïo dè rotso té foro mourir, etc.
Nè té cal pas bèïr' oquèl', aïo, quèl' aïo,
Mès cal prèndr'un couot d'oquèl' aïo dè bi!

S'uno filhoto sè bouol morida, pitchouno,
S'uno filhoto sè bouol morida,
Li cal pas douna d'oquèl' aïo dè rotso,
Aïmaro miliour oquèl' aïo dè bi!

泉の水

泉の水はあんたの命取り、娘さん
泉の水はあんたの命取り
あの水を飲んだらいけないよ、いけないよ
飲むんならワインをコップ一杯!

女の子がお嫁に行きたくなったら、かわいい子
女の子がお嫁に行きたくなったら
女の子に泉の水を飲ませちゃいけない
ワインのほうがいいに決まってるもの!

−濱田滋郎:訳『オーヴェルニュの歌』のライナーノーツより


■『オーヴェルニュの歌』 −Wikipedia
■『オーヴェルニュの歌』(ネタニア・ダブラツ) −Amazon
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2011年05月06日

ビアズリーの描くサラ

Sarah_by_Beardsley
▲1888年制作 鉛筆 プリンストン大学図書館所蔵

前記事でサラ・ベルナールのことを調べるうちに、ビアズリーがサラのクロッキーを唯一点のみ描いていることが判った。

散々探して、ブライアン・リード編集の画集の中に見つけることが出来た。(1967年 ロンドンのStudio Vista社刊)

これが後の一連の『サロメ』作品群に着想を与えていることは、明らかのように思える。
posted by Usher at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | 更新情報をチェックする

2011年05月05日

ミュシャのサロメ

「そうだ、サラがいい」
−オスカー・ワイルド

salome_by_mucha

あまり知られていないが、世紀末の商業画家アルフォンス・ミュシャもサロメを描いている。

このサロメのモデルは誰だろう。他のポスターと同じくサラ・ベルナールだろうか。制作年は1897年で、1900年迄はサラとの契約期間中だから可能性はある。
ワイルドの『サロメ』執筆後ではあるが、サラ主役での上演は結局計画倒れに終わっている。(予定ではヘロデ王役がアルベール・ダルモン、衣装デザインはグラハム・ロバートソンの筈だった。)
サラの写真を見ると少し似ているようにも思うのだが。

いずれにしてもこの絵のサロメは少々ふくよかで、冷酷でエキセントリックな印象はあまり伝わってはこない。

ターバンを巻いて華奢なデザインの竪琴を爪弾くこのサロメは、どこかオリエンタルな雰囲気がしてそこがミュシャらしい。


■サラ・ベルナール (サラの肉声あり) −Wikipedia
■サラ・ベルナール メディアと虚構のミューズ −Amazon
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鎌倉を遊んだ時のこと

先日、久しく鎌倉に遊んだ。

江ノ島で生しらす丼を食べ、江の電に乗って途中下車し、由比ヶ浜をぶらぶらと歩いた。

もう少し時間があれば、東勝寺橋たもとの喫茶店「OMOTE」に寄ってコーヒーでものんびり飲みたかったものだが。(近年オーナーが某女優さんに代わって店名も洒落た横文字になった。)

窓越しに見える滑川沿いの木に時折栗鼠がよってきて、観光客の喧騒から少し離れることが出来る。

ここの向かいのお宅が澁澤龍彦の旧宅であったことは、有名な話だ。
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2011年01月30日

『ブランデンブルク協奏曲 ピアノ・デュオ版(連弾)』

『ブランデンブルク協奏曲 ピアノ・デュオ版』

当世風に云うならば、「これはこれでアリ」な編曲だなと思った。

過日、NHKの某番組で『ブランデンブルク協奏曲 第5番』の第3楽章が流れていると思ったら、それがピアノの煌めくような音しかしないので「そんな編曲が在るのだろうか」と、ふと検索したのがきっかけだった。

結果、ストラダル編曲によるピアノ独奏版と、マックス・レーガー編曲のピアノ・デュオ版が見つかったのだが、CDになっているのは後者だけだったので「またマックス・レーガーか。」と思いながらも購入して聴いてみることにした。

先だって記事にした『ゴルトベルク変奏曲 ピアノ2重奏版』はヨーゼフ・ラインベルガーとの共作だったせいか、聴いていて随分豪奢な印象を受けたが、此方は『ゴルトベルク変奏曲』とは違ってロマン派的な解釈で編曲されておらず、ほぼ原曲の侭なのでスッキリと聴けた。

個人的には第3番と第5番がピアノの透明感のある音色と、跳ねるようなリズム感を生かせていて、とても良かったというのが素直な感想である。

ピアノ独奏版の楽譜は最近出たばかりのようだが、誰か演奏する人がいないだろうか、などと思うこの頃だ。


追記:2011/2/1) Kalmusから出ている楽譜(上・下巻)を見て分かったのだがこの編曲、ピアノ連弾であるようだ。(「FOR ONE PIANO FOUR HANDS」とある。) よって記事の修正を行った。
尚、楽譜はDoverからも出ているようなので、リンクを追加した。


■ブランデンブルク協奏曲 全曲 (ピアノ・デュオ版:レーガー編曲) Trenkner & Speidel (P) −HMV ONLINE
■ブランデンブルク協奏曲 全曲 (ピアノ・ソロ版:ストラダル編曲) [楽譜] −Amazon
■ブランデンブルク協奏曲 全曲 (ピアノ・デュオ版(連弾):レーガー編曲) [楽譜] −Dover
■マックス・レーガー −Wikipedia
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2010年09月12日

ゲームセンター

xevious
▲『XEVIOUS』。もはや説明の要らないほど有名なnamcoの大ヒットシューティング。(c)namco LTD. 1982

「やっちゃん、行こうぜー」
それが私達3人の放課後の合言葉だった。

私とTクンともう1人(確かにもう1人居たのだが顔も名前も思い出せない)で集まってよく遊んだものだ。「やっちゃん」と云うのはこの3人の間の隠語で、駅前にあるゲームセンター「やすだ」のことを差した。Tクンが先生にバレないように考えたものだった。

家に帰ってランドセルを置き(けしからんことに小学生だった)、幾許かの小銭を掴み、首尾よく母親の追撃をかわして落ち合うと駅前に向かった。
パチンコ屋の脇にある2階へ続く薄暗くカビ臭い階段を昇ると、そこには小宇宙のような世界があった。ブラウン管に映る画面は絶え間なく切り替わり、瞬くようにキラリキラリと輝いていた。少なくとも私の目には小さなアミューズメント・パークのように見えた。

コワそうな学ランのオニイちゃんの脚の間をすり抜け、少しタバコ臭いのを我慢しながら、その頃はやや下火になっていた『ゼビウス』の台でゲームを興じていたものだった。

然し暫くして「ファミコン」というコンシューマ機が発売されると、私達3人もゲームセンターから段々足が遠のき、集まることも少なくなっていった。

Tクンはどうしているだろう。実家を継ぎお琴教室でもやっているだろうか。もう1人の子は?
ゲームセンター「やすだ」はもう無い。その下の階のパチンコ屋だけが今も元気に営業中である。


■ゼビウス −Wikipedia
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2010年09月08日

『象牙の一片』 −ビアズリー最後の詩

嘗てイギリスで「世紀末の寵児」と謳われた画家オーブレー・ビアズリーも、晩年ともなると進行した結核のため、南仏はマントンのホテルの病床に伏していた。

Volpone_Act3_Scene1
▲同時期に描かれた『ヴォルポーネ』より。

その頃書かれたビアズリーの未完の詩に『象牙の一片』というものがある。(副題は「白昼夢」。後ほど消されている)
スタンリー・ワイントラウブが著した伝記『ビアズリー』(美術出版社)から、高儀進の訳で紹介したい。尚、ここでは原文も併せて載せておく。
『象牙の一片』

肩帯を半ばずり落とし、無造作に頭巾をかぶり
ネクタイを乱暴に結び、飾り房をなびかせ、
魅惑的な夢の記憶に悩まされつつ、
私は朝まだき街を足の向くままに歩いた。

私は大きな部屋を想い出した。日は
半ば死に、壁の上に幽かに、或る
不思議な物語に織り込まれた俳優達の
儀式めいた演技を不意に蒼白く染め出した。

素晴らしい庭に――そこにはロマンチックな樹々が
名もないその枝の上に止まった……


The Ivory Piece

Carelessly coiffed, with sash half slipping down
Cravat mis-tied, and tassels left to stream,
I walked haphazard through the early town,
Teased with the memory of a charming dream.

I recollected a great room. The day,
Half dead, lit faintly on the walls the pale
And sudden eyes that showed the formal play
Of woven actors in some curious tale.

In fabulous gardens, where romantic trees
Perched on the branches birds without a name.

ワイントラウブはこれをR・A・ウォーカー編の『ビアズリー雑録』を出典としているらしく、注釈にもその旨がある。澁澤龍彦が『美神の館』を訳出した際もこの『ビアズリー雑録』を底本としている。

『象牙の一片』は一見モルヒネ常習者(この頃常用していた)の譫言のようで大した意味を成さないが、ワイントラウブも書いているように、画家よりも文士として評価されることを願ったビアズリーの「監獄からの飛翔」だったのかもしれない。


※尚、高儀はビアズリー、澁澤はビアズレー、関川左木夫はビアズレイと表記はまちまちだが、ここではおそらく最も一般的であろう「ビアズリー」で統一した。
posted by Usher at 03:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学 | 更新情報をチェックする

2010年08月21日

ドイツ表現主義映画 2選

nosferatu

友人にヴィデオテープを貸したはいいものの、その侭引っ越されてしまいついに返して貰う機会もなくなったので、結局改めてDVDで購入することとした。

『吸血鬼ノスフェラトゥ』に『カリガリ博士』、どちらも今更説明も要らないドイツ表現主義映画の傑作である。
個人的には弁士の解説入りが好みなのだが、GoogleVideoでは日本語字幕の入ったものが視聴できる。(どちらもパブリックドメイン) 尚、訳は青空文庫では高名な翻訳家の大久保ゆう氏。

いまだ衰えない残暑の折に、クラシックなホラー映画でも如何だろうか。


追記:2010/8/28) 東京都国立近代美術館 フィルムセンターにて弁士・伴奏付きの無声映画を上映しているとのこと。リンクを追加した。9月9日迄。

追記:2011/9/2) GoogleVideoのリンク先削除。



■『吸血鬼ノスフェラトゥ』(字幕)  −GoogleVideo
■『カリガリ博士』(字幕)      −GoogleVideo
■『吸血鬼ノスフェラトゥ』新訳版  −[DVD]
■『カリガリ博士』新訳版      −[DVD]

■『フィルム・コレクションに見るNFCの40年』 −東京国立近代美術館 フィルムセンター
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2010年08月14日

エクルヴィス

−ジェラール、蝦(エクルヴィス)はどう? ほんとよ、ほんとよ、早くいらっしゃいよ。まるでほっぺたがおっこちそうよ。
−ジャン・コクトー 東郷青児:譯『怖るべき子供たち』

Les Enfants Terribles

某有名サイトで知ったのだが、北欧発祥の大型家具店で期間限定・先着順でザリガニ料理が振る舞われるとのことだ。

ザリガニというと子供の頃に競って捕ったのを思い出す。
鱈燻を餌にしても直ぐにふやけてしまって駄目で、スルメで試すと驚くほど簡単に掛かったものだ。然しスルメはザリガニには贅沢で、母はおいそれと出してはくれなかったが。

日本では子供の格好の玩具でも、フランスではエクルヴィス【écrevisse】、イギリスではクレイフィッシュ【crayfish】などと云って割と一般的な食材なのだそうだ。尤もこちらはヨーロッパザリガニといって、真っ赤なアメリカザリガニとは違う食用の品種らしい。

ジャン・コクトーの『怖るべき子供たち』にエクルヴィスが出てくる有名な下りがある。(※) 床について寝ぼけたポールの口にエリザベートがエクルヴィスを押し込む描写は、ガラスの破片を突き立てられたかのように衝撃的でもある。

※単に「エビ」と譯している文庫もあるようだが、画家として有名な東郷青児の譯では「エクルヴィス」とルビを振っている。岸田國士はこの譯書に寄せて、「この「恐るべき翻譯者」は羨ましい武器をもつてゐる」と讃辞している。


■IKEAで珍味・ザリガニが食べ放題、「ザリガニパーティー」の開催日程が決定 −Gigazine
■『怖るべき子供たち』 譯:東郷青児  −角川文庫
■『恐るべき子供たち』 譯:中条省平・志穂 コクトーの挿絵入 −光文社古典新訳文庫
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2010年07月09日

『自動演奏楽器』

私がヴァイオリンを始めて間もない頃、ハップフェルド社の自動演奏楽器が展示されていると聞いて、麻布に遊んだ記憶がある。

Hupfeld Phonoliszt Violina Model-B.jpg
▲ハップフェルド・フォノリスツ・ヴィオリナ Model-B。写真は実際に売りに出されているもの(※下記サイトより転載)。財布と場所に余裕のある方は交渉してみるのもいいかもしれない。

自動演奏楽器というのは、20世紀初頭の頃ヨーロッパのダンスホールやパブなどに置かれ、人間の演奏に代わって人々の耳を楽しませた生の楽器を使ったジュークボックスのようなものだ。
中でもドイツのルートヴィッヒ・ハップフェルド社の『フォノリスツ・ヴィオリナ Model-B』は、その精妙さから自動演奏楽器の傑作ともいわれている。レーニッシュ社製のアップライトピアノにヴァイオリン3丁(各D線・A線・E線を担当)を組み込んで、回転する弓に押し当てるようにして音を出している!
ニューマティックシステム(空気式)という制御法を取っているようで、紙のロールを換えることで別の曲を演奏することも可能だそうだ。(但しG線を使うような重たい曲は演奏できない。パブでその必要も無いかもしれないが。)

MP3プレイヤー等という言葉を聞くようになって久しい。何千という曲をポケットに入れて持ち運べるような時代になっても、一つの曲を生の楽器を使って再現しようとした100年前の技術には感嘆するばかりだ。


■Hupfeld Phonoliszt Violina Model-B (動画) −YouTube
■諏訪湖オルゴール博物館 (実物を展示)
■Tim Trager Invites You To Discover The World Of Mechanical Music! (※)
posted by Usher at 00:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | 更新情報をチェックする